好奇心。
日が陰ってから台所もそのままに車に飛び乗り家を出た。
昼間はとても暖かい一日だったが、暮れればここはカナダだと思わずにいられないほど気温が下がる。紅葉は2週間も前に終わってしまって葉はほぼすべて枯れ落ち、枝が寒そうに冬支度をしている。街はクリスマスネオンが始まるまでの数週間はとて閑散としたイメージとなる。
私は少し急いでいる。今日は2度目の試験の日だ。
試験は1回で済むはずだった。カレッジの教員と運営で連絡ミスがあったようだ。私は先週の試験終了後、「おめでとう、うかりました」といわれて授業を終わり、次のオリエンテーションまで自宅待機といわれてうちに帰ったのだ。それをわざわざ、カレッジは翌日メールをしてきて「1セクションの点が足らないので再試験を受けるように」と言われた。
テスト範囲などないこの試験に私は狼のように叫んで怒り狂ってしまった。
わオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!
もし落ちたら、、、どうなるんだろう。今週中に受からないと次のコースの枠が埋まってしまう。枠が埋まったら来年の9月まで待たないといけない。年ばかり取ってしまう。などと無意味なネガティブ思考回路で胃が痛くなった。ハロウィーンの週末はストレスフリーで迎えるはずだったのに、何をやっても頭のどこかに「試験」が残る味気ない週末だった。
それでも試験のターゲットもないまま、オンラインの単語を週末に800語ほど目を通し、
今日は再度試験を受けるべく車を走らせている。出かけに旦那は大きく抱きしめてくれてグッドラックと耳元で言ってくれた。
クウィーンズウェイはいつもどおりの混み具合、でも目の前には大きな満月がすわっていて、「今日は特別な日だね」と私を見ている。でも「大丈夫だよ」とはいってくれない。じっと見ている。
教室に着いたら事情を知らないクラスメイトは「どうしてここに来たの?」という目で私を見る。「あえなくなったら寂しいって言っていたから会いにきたのよ」と冗談を飛ばし、先生と2-3の打ち合わせをしてから最後の目通しをした。
先生はすまなそうな顔をしている。「あなたならできるわ、落ち着いて」と言ってくれた。
一緒に試験を受けたクラスメートの女性が近寄ってきた。彼女は性格も見た目も私とはるかにかけ離れた異人種だ。背が高く80キロはあるふくよかな身体でアフリカ系カナダ人、試験の当日まで一度も口を利かなかった彼女はいつも落ち着いていた。
「試験どうだった?」と彼女が聞いた。
「コンプリヘンションは通ったけどボキャブラリーの点数が足らなかったから今日もう一度試験なの。」と正直に言った。
彼女は背をかがめて大きく顔を近づけてきて、これまた大きな胸をつくえにのせ、両手を私の肩に乗せ、これまた大きな目で私の目を覗き込んだ。
「あなたならできるわ、新しいクラスで会いましょう。」
彼女はにこっと笑って立ち上がった。
そしてそのまま部屋を出て行った。
今日はたくさんの人の心に触れたような気がした。
私はその後試験を受けて無事に合格した。
帰り際、何を考えていたかと言うと、
あのクラスメートのことだ。
彼女はきっと奥が深い女性に違いない。
もっと知ってみたい。
私の好奇心はこんなときにでもうずうずしている。
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