私は大人になるまで、ナンバー1という人にあったことがなかった。いつも中の中かその下って所をうろうろしていたと思う。周りの人もそんな感じだった。それはそれで楽しかった。ナンバー1の人の気持ちなど考えたこともなかった。その必要もなかった。
カナダに来てからいろいろ頭のいい人に出会うようになった。職場はカナダ中の秀才がインターンとしてやってくる。一緒に野球する人で博士号もっている人も少なくない。でもみんな優秀ではあるが1番ではない。首相だって一番ではなかった。今は国をリードする人だけど。そんな人たちは、みんなちょっと仮面をかぶった感じがするけど、めくればいい人たちだと思っている。とてもユニークだ。そしてわくわくする世界を持っている。知識の宝庫。
ここでいいたいのは、
1番だった人は他の人とちょっと違った悩みがあるんだなぁと最近気づくことがあった。もちろん想像はつくけど実際に見たことはなかった。ほとんどの知人はみんな優秀だけど1番ではないから1番であることの苦悩というのは実際ついてこない。つまりホームラン王がホームランの数をキープする苦悩というのか、大食い競争世界1が世界1でい続けるための食の苦悩ってやつだな。
私は以前に信じられない天才小僧が私の友達夫婦の長男坊であると書いたことがあった。(いやなかったかもしれない。書き忘れたかも)18ヶ月のときに「僕のオムツはお母さんが替えるからいい」といって私の目を点にした口の達者なベイビーだ。うちの息子は24ヶ月なのに未だに「水ちょうだい」がいえない。今はその長男坊2歳半でやっぱり会うたびごとに顎はずしそうになるほど口が達者なのだ。
親がわかる。
まぁ、この子どもを製造するのに精子を提供したのがその「1番」のB君である。彼は真の1番街道を歩いてきた男なのだ。
彼は大学でコンピューターサイエンスを取って首席で卒業している。旦那にいわせるとダントツ1番だったらしい。旦那はっていうと、同じ年に同じ大学を何とか卒業できた。Bは天才だったわけではなく超秀才だったようで、まるでラブか図書館に住んでいるような男だったらしい。かといって超ギークかといわれれば、スポーツ万能で背は175センチくらいだけれど190センチ男のブロックをかわしてスパイクを決めるほどジャンプする。野球をさせると細い体からホームランを連打する。
自分のことしか話さないけど、面白いし害はない。人付き合いもいい。学校を卒業してすぐこれまたとてもチャーミングで頭のいい奥さんをもらって今3人目の子どもが4ヶ月。友達同僚の中では一番の子沢山。多分、友達同僚の中では貯金額も1番だろう。30になる前に家のローンも終わってしまっている。
これは1番であったことについて言っている。彼が世界で一番だったわけではなく、そのおかれた環境において、常に1番だったのだ。もちろん言い換えれば自分が1番になれる環境に身をおいただけのことかもしれない。でも並々ならない集中力で勉強に打ち込んだは確かだ、私の旦那が見ている。彼の家族が送ることの出来た大学で1番の成績だったのだ。すごい田舎出身なのだ。旦那曰く恐らく前の職場でもトッププログラマーだったに違いない。らしい。そうであるべく夜な夜なうちに仕事を持って帰ってきているのは知っている。カールトン大学でマスターもとっている。転職した先でもやはりトップのプログラマーなのである。
万人の住む一般社会においては弊害も出る。
それは、
彼は1番になれなかったときに手のつけようのない男になる。
バレーは6人でする。他のチームメイトがミスをして負けそうになるとかなりの罵声を発する。自分のチームメイトに対してだ。でもゲームが終わればけろっとしているけど。野球で打順が気に入らないと靴履きかえてうちに帰ってしまう。(特にあまり調子のよくないときなど)
まぁ、Bだから仕方ないかな。と私は思ったりする。旦那はその子どものような行動にちょっと怒っている。
でも彼はここへ来て30半ばになって、無理がきかなくなってきたようだ。幼児3人抱えて妻はだんだん強くなり、自分のことに打ち込む時間が少なくなってきたみたいで思ったように1番でい続けられないようだ。野球やバレーで怪我もよくする。準備が出来ていないんだろうな。
ベンチに座って気の抜けたような失望したような顔になっている。
何しろ1番か尻尾巻いて逃げるかって感じなのだ。
子どものように何もかも放り出してしまう。1番でいられないならやーめたって感じ。
これでも父親になってから少しは大人になって罵声を発することはなくなった。旦那は成長したなぁ、といっていた。旦那は一緒にスポーツしなかったらとてもいいやつで好きだと言っている。
でも近頃は罵声を発する代わりに途中でやめちゃうようになったようだ。帰っちゃう。でもBはそこいらのプイっと背中を向けて逃げていく男と違って、とても辛そうなのだ。帰るしか他に道はないって顔になっているのだ。
で、私は思った。
彼はもうじき常に1番でいなければいけないということから卒業して、人生楽しもうと思うようになるのかなぁ。その脱皮時期なのかなぁ。つらそうだなぁ。乗り越えたらホームラン打たなくても野球楽しんでくれるよね。るんるん
そう、私はそう思ったのだ。
実際はというと、
野球(ソフトボール)に来なくなってしまった。ホームラン王バッターでいられなくなった彼はプレーするのをやめてしまったようだ。
彼はもし仮に、トッププログラマーでいられなくなった日が来たらどうするんだろう。
一般市民の私たちのように一緒に馬鹿にはなってくれないのだろうか。
王監督のようになるか、伊良部のようになるか、
この先も見続けて生きたいなぁと思った。
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